2012年の “Elemental” リリース後、実験的にクラブ・ミュージックへアプローチした12"EPの “Testpressing” シリーズを挟んで、4年振りとなるフルアルバム。アンビエント/ノイズ志向だった “Elemental” よりも、ビートを追求した “Testpressing” シリーズの延長にある。
以前の Demdike Stare が持っていた不安感の情念的な表現という特徴は、ここではわりと希薄。“Testpressing” シリーズではまだ残っていたエキゾチックでヒプノティックな部分ももはやない。曲によっては相当にドライ、しかも無機質な方向ではなく明るさを伴う乾燥ともいうようなトーンで、コミカルとさえ表せそうなものがある(M-2 “Animal Style”, M-5 “FullEdge (eMpty-40 Mix)”)。曲やアルバムのタイトル、アートワークなども、従来のダークに統一された世界観とははっきりと一線を画している。
とはいえ “Testpressing” シリーズから通して聴いてみると、漸進的な変化の結果このアルバムに行き着いていることはわかる。単体として聴けばかつての曲調からそれほど違和感ないトラックもある(M-1 “Curzon”, M-8 “Fridge Challenge”)。突出したいくつかの曲に印象を引きずられるところはあるものの、リヴァーブやビートなど構成要素や手法を局所的に見ればこれまでの Demdike Stare と同様であり、制作スタイルの面で必ずしも過去と断絶した激変が生じているわけではないのかもしれない。
ビート構築の進化的極致と言えるようなものをひとつ選ぶとするなら、M-7 “Airborne Latency”。
異なる手触りの多様な打音でビートが編み上げられ、曲の進行に連れてその構成が遷移していく。細かな破砕音やクリッピングのようなノイズでディテールに富んだ情景が維持されつつ、後半で合流してくるアンビエンスによって空間の広がりがもたらされるという展開。
Demdike Stare
Information
Origin | : | Manchester, UK |
Founded | : | 2009 |
Current members | : | Miles Whittaker, Sean Canty |
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Label | : Modern Love http://www.modern-love.co.uk/ |