クラシックやフォークの風味があるストリングス主体の楽曲に、叙事詩的で大仰な歌詞を歌うヴォーカル。全部で12ある曲は、Lewis という名の“超暴力的な”農夫がめぐる情景を描いているとのこと。
けれども実際の印象としては、そんな基礎情報からは想像もつかないほどにポップ。
Owen Pallett はもともと Final Fantasy という名義で活動していたのだけど、この3rdアルバムを Domino から出すにあたり Square Enix との法律問題を回避するため本名でリリースすることになったようだ。旧名が示している通り、ゲームが大好きな人で、インタビューでもたびたびゲーム絡みの質問をされている。一方で、子供の頃からバイオリンを習っていて、大学でもクラシック音楽を学んできたという側面も持っている。
たしかに、ここで紡がれている情景や歌詞に表されている世界観にはゲーム文化からの影響が窺えないこともないのだけど、楽曲そのものが特にゲーム音楽っぽいというわけでもない。どちらかというと、映画音楽だとかオペラのような趣向だ。出来事に合わせて曲が展開し、音によって心理が描写される。そうして提示された情景はとても鮮やかに細部まで造り込まれていて、他の人が簡単に真似できないような独自の世界を実現している。自分の描く奔放な想像を、音楽のかたちでたやすく具現化できるスキルを持っている人なんだと思う。
この曲を部屋で流しているのを耳にした人がいたなら、その人の音楽の好みが何であれ、必ず関心をもって部屋のなかを覗き込んでくるだろう音楽。
official: http://www.owenpalletteternal.com/
myspace: http://www.myspace.com/owenpallettmusic
ASIN:B002Y3DEKE